「黄金のバンタム」を破った男

きっかけ

ネットでいつの間にか知っていた。紹介されている記事をいくつか読んで面白そうなので、買ってみることに。著者が今度映画化もされる『永遠のゼロ』をはじめ、出す本出す本ヒットを飛ばしている百田尚樹(※)なので、間違いないだろうと思った。唯一読んだことのある『風の中のマリア』も面白かったしね。

※『海賊とよばれた男』が2013年本屋大賞を受賞しましたね!おめでとうございます!

感想など

とても熱い、熱くなれる本だ。「黄金のバンタム」であるエデル・ジョフレを破ったファイティング原田を軸に、当時の日本のボクシングだけでなく、戦後の一時代をも切り取って見せてくれる。

私にとってボクシングとは、『あしたのジョー』が好きだったくらいで、実際のボクシングはほとんど見たことがない。アニメの『あしたのジョー』は、小学生のときに夕方の再放送を見て、力石徹の死後の続編のアニメを見たのが中学生か高校生くらいだったか。原作の漫画の方は、一部をほんのチラッと見たことがある程度である。

ファイティング原田の名前は聞いたことがあるという程度で、この舞台となる時代のおわり近くに私は生まれている。だから、このノンフィクションの内容は、ほとんどまったく知らないことばかりだった。

文章はとても読みやすく、早く次が読みたくて仕方がなかった。同じ内容や説明が繰り返し出てくるところがいくつもあり、最初のうちは、あれ?と思ったが、そのうち慣れ、むしろ知識がないので復習になってちょうどいいと思うようになった。

全編を通じて、運の良し悪しにどれほど人が左右されるかが描かれる。そして、運のよさを生かすのは、結局その人の努力だと付け加えるのを著者は忘れない。高度成長期で、世の中がんばれば報われる時代に、ストイックな原田の努力と前へ前へ進むスタイル、そして勝利は確かに見る者を熱くさせただろう。

ファイティング原田の言葉、

俺は素質のある方じゃなかった。だから人の2倍3倍やらないとダメだったんだ。

努力はかならず報われる。練習は裏切らない。そのことを証明するためにも、何が何でも勝ちたかった。

は、ここだけ切り取っても十分、好きな言葉リストに入れたいものだが、本書を読むとより重みが深まる。

『あしたのジョー』での減量のための練習シーンや減量中の姿など、子供心にぞっとしたものだが、あれは誇張でもなんでもなく、まさに本当の姿なんだと読んで知るにいたった。

他にも、あ、これはあれだ、あれはこれだというように『あしたのジョー』はいくつも実際の人物や出来事をモデルにしているのだということがわかって、それがまた私には興味深かった。

購入・各種データ

画像は楽天ブックス、文字はアマゾンにリンクを張ってあります。

「黄金のバンタム」を破った男 (PHP文芸文庫)
単行本もあるよ。こちらはhontoにリンクを張りました。

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初回更新:2013-02-04 (月) 05:47:42
最終更新:2013-04-15 (月) 08:30:04
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