人を動かす、新たな3原則
これを読んで、今よりも人を動かすことが上手になるだろうか?
私に関しての結論を先に言うと、本書に書いてあることをちょっと試したら、驚くほど簡単に成果が上がった。今これを書くために、ところどころ読み返しているが、何度でも読み直して、そして試してみたくなる本だ。そして、間違いなく、そのたびごとに成果が上がり、その精度も高くなるだろう。
この本の対象者は、次のような人になると本書には書かれている。いや、正確にはそうは書かれていない。次の4つの質問に該当するかどうかの問いかけがされている(P54)。
- 商品やサービスの購入を人に勧めることで生計を立てているか?
- 独立して働くか、副業であってもなにか自分で事業を営んでいるか?
- 仕事にスキルの弾力性が求められるか?つまり、境界と役割を超える能力、専門外の領域で働く能力、終日、多様な業務をこなす能力が求められるか?
- 教育か医療の分野で働いているか?
現代において、3がまったく当てはまらない仕事があるのか、正直疑問である。(2)、3、4を本書では「売らない売り込み」と呼んでいる。本書の第1部は「売らない売込み」がいかに必要かという意識付けになっている。
私はいわゆる営業マンではないが、営業は私の重要な業務の一つなので、いきなり1から当てはまる。そのためこの第1部は私には不要なようでもあるのだが、文章が非常にうまく、また取り上げられている内容もとても興味深く、読み飛ばすことはなかった。
第2部 セールスに必要な特質、第3部 セールスに必要なスキルが本題。苦手なので、いつもは本の要約をしないのだが、今回はあえて自分のためにもしてみようか。
セールスに必要な特質
新しいセールスに必要なのは、以下のABC。
- 同調(Attunement)
- 浮揚力(Buoyancy)
- 明確性(Clarity)
かつては「必ず(オールウェイズ)まとめろ(ビー)契約を(クロージング)」でABCだったということで、それにひっかけて、上記のようなキーワードでまとめている。
A:同調
のっけから、うまくまとめられねぇ(汗)。ここに書いてあることは、日本人は大体得意ではないかと思う。
視点取得は、今の時代に人を動かす上で不可欠な、第一の特質の中心となる。同調とは、自分の行為と見解を、他の人とも自分自身が置かれた状況とも、調和を図る能力である。
同調というと、共感という言葉が私はパッと浮かんだ。しかし、共感は大事だが共感だけではだめだという。共感は感情的な反応で主に感情に関するものであり、視点取得という認知能力的で、主に思考に関する働きが必要だと言う。これには納得である。
一般に、女性は男性よりも共感能力が高いが、しかし、共感だけで同じところをぐるぐる回って、場合によってはミイラ取りがミイラになって何にも結論が出ないということがよくある。トレンダーズ社長の経沢香保子著『自分の会社をつくるということ』にも確か似たようなことが書いてあったと記憶している。
第4章 同調の最後に、外向的と内向的の中間である両向的な人についての記述がある。その人が内向的か外向的かは、『ユングの性格分析』を読んで以来関心を持ってきたことで、最近では『内向型人間の時代』を読んだこともあり、その熱が再燃している。大人になれば、そんなに極端な人はあまり見かけないなというのが、最近の私の結論だが、それを裏付けるようなことが書いてある。セールスというと、とかく外向的な人がうまくいくようなイメージがあるが、実際には外向、内向、どちらにも偏らないバランス型の方がよいということである。
B:浮揚力
浮揚力とは、これまた聞き慣れない言葉を持ってきたと思った。冒頭で、本書に書いてあることをちょっと試したら、驚くほど簡単に成果が上がったと書いたのは、ここに書いてあることを実践したからだ。
以下の3つのスキルからなる。
- 人を動かそうとする前に 疑問文形式のセルフトーク
- 人を動かそうとしているときに ポジティビティ比
- 人を動かそうとしたあとで 説明スタイル
即効性があったのは、疑問文形式のセルフトークだ。セルフとなっているが、自分だけでなく、われわれ、あなたたち、でも使える。
「自分はできる」と単に自己暗示をかけるよりも「自分にはできるかな?」といったん質問をした方が「自分はできる」と強く思えるようになる。そう、単に、We can.よりも、Yes,we can.なのだ。
自分の仕事に関しては、あえて伏せているので、くわしいことが書けないのが残念だが、とにかくやればわかる。いとも簡単に内発的動機を引き出すことが出来る。ここだけでもこの本を買った価値はある。私はすでにこの本の元をとった。
昨日ここを書きかけている途中で気づいたのだが、実は、当『混沌の間』はトップページでこう問いかけている。
あなたにとって、今日は素晴らしい日ですか?毎朝『混沌の間』にアクセスしてもらえれば、毎日が素晴らしい日になること請け合いである!?
ポジティビティ比という言葉も初めて聞いたが、この概念と調査結果がまた役に立つ。これはすぐどうこうというものではないが、長い目で見て、人生にあたえる影響は非常に大きい概念だ。
私が勤めている会社の先代社長は、3勝1敗くらいがちょうどいいというようなことを確か言っていた。私が聞いたのは1回だけかもしれないが。負けが込むのはもちろんよくないが、全部勝つのも天狗になってよくない、たまに負けるのがいい。そのことを思い出した。
ポジティブな感情とネガティブな感情は3:1(もっと正確には2.9013:1)に達すると、すべてがうまくいくということだ。まさに3勝1敗。勝率7割5分なので、けっして低くはないと思うが…。
子供をほめるのとしかるのも1:1ではダメで、ほめる比率を高くしたほうがいいというというのをどこかで聞いたことがあるが、やはりそれを裏付けている。
説明スタイルについてはここでは割愛したい。セリグマンの楽観主義についてだが、いろいろな本で触れられているし、本家本元の『オプティミストはなぜ成功するか』についても、近日中に必ず書くから、そちらを参照してほしい。
ちなみに、楽観主義に関しては、もう10年以上顧客向けに講演しているし、ほとんど準備なしでも1時間から1時間半くらい話が出来る。もしもオファーがあれば、gmailで受け付けます。
C:明確性
明確性とは、そのまんま引用するが、
明確性とは、見えていなかった様相を明らかにして、置かれた状況を理解できるようにする能力で、それまで存在に気づかなかった問題を突き止める能力のことだ。
これ、むちゃくちゃレベル高い。どうすりゃいいんじゃい。数学などでも問題解決能力と同様、問題発見能力が大切だよく言われる(と思う)。いかなる実験を組み立てるかというのも同じだろう(『孤独なバッタが群れるとき』『カエルの鼻』『天敵なんて怖くない』あたりがお薦め)。適切な質問をする能力もこの明確性の一部だろう(『パワー・クエスチョン』がお薦め)。
ここでは、フレーミングについて出ている。このフレーミングというのが、今の私にはまだよくわかってないんだよなあ…。まあ、でも続ける。次のように書いてある。
次に挙げる5つのフレームは、心を動かしたいと思う相手に自分の申し出を明確に理解してもらう際に役立つ。
して、その5つのフレームとは、
- 少ないというフレーム
- 体験のフレーム
- レッテルのフレーム
- 傷によるフレーム
- 可能性のフレーム
それぞれが1ページ程度なので、まとめるまでもなく、必要ならば該当箇所を読めばいい。これらの具体例を読みつつ、なるほど、言いたいことはこういうことなのかとだんだん理解できてきた。
推薦書籍が5冊出ていて、その筆頭がチャルディーニの『影響力の武器』だ。「必読の書である。今すぐ買うべきであろう」と書いてある。ついこの間読み終わったが、まったく同感だ。他の4冊も機会があったら手に取ってみようと思う。
サンプルケースの2つの質問は、使える(さっそく使った)。勉強を始める気配のない子供に対して、
質問1 1が『これっぽっちも勉強するつもりはない』で、10が『勉強する気満々』だとしたら、1から10の間の数字で表すと、どのくらい勉強する気がある?
これに答えたら、次の質問。
質問2 どうしてもっと低い数字を選ばなかったの?
なぜこの質問が効果的かはここでは割愛(本文に書いてある)。これは使える。いろいろバリエーションを工夫して。
セールスに必要なスキル
次の3つについて出ている。
まだつづく
購入・各種データ
人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!
初回更新:2013-08-09 (金) 18:07:06
最終更新:2013-08-12 (月) 04:13:56
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