今この世界を生きているあなたのためのサイエンスⅠ

きっかけ

2冊の分冊で、確か震災前からこの本を知っていた。特にの方の地球温暖化のところはかなり立ち読みした。しかし、Ⅰ、Ⅱすべてをちゃんと読んだのは震災後だったと思う。ちょうど子供たちが春休みのころに、図書館から借りて読んだように記憶している。もちろん、原発事故があったから、原子力について、エネルギー問題について、そして、地球温暖化について、理論武装してきちんと自分なりに整理したいと思ったからだ

購入したのはその後しばらくしてからで、今調べたら6月24日の発注であった(こういう風に履歴が残っているからネット書店はいい)。絶対手元に置いておきたいと思った。その後、何度も読み返している。

感想など

とにかく、大勢の人に読んでほしい本だ。なかなか導入が巧みだったり(P114)もするが、次の文章が本書のスタンスを良く示しているだろう。

 チェルノブイリ事故についてはくわしく説明することにします。というのは、政策に影響を与えたいと思う人たちが、よくこの事故の話を持ち出すからです。この事故に関する事実は、過大にも過小にも見せかけることができますから、事実を知っていれば、きっと役に立ちます。

Ⅰの内容は

  1. テロリズム
  2. エネルギー問題
  3. 原子力

テロリズムから始まっているのがアメリカらしいと私は思ったが、どうもこういうのを対岸の火事と思ってしまう私が日本人らしいのか。

一昨日(3月2日)だったか、北朝鮮がウラン濃縮を一時停止するというニュースが流れたのは。ウラン濃縮の何が問題なのかは、この本のテロリズムのところ、そして原子力のところを読むとより深く理解できる。

  • ウラン濃縮関連をもうちょっとくわしく(ここは飛ばしても可)
    • ウラン型の原爆とプルトニウム型の原爆の違いをどれくらいの日本人が知っているであろう。せいぜい広島に落とされたものと長崎に落とされたものの違いくらいではないだろうか。私もこの本を読むまでそうだった。

      著者がまさに「はじめに」で指摘しているように、大学で物理を専門的に学んでもその程度なのである。別に大学が悪いわけでも学生が悪いわけでもない。そういうことは別に習わない。特別教える必要もないだろう。ただ、そのようなことがこの本には書かれているということだ。

      そして、ウラン型とプルトニウム型の違いを知っておくことは、実は重要だ。北朝鮮がプルトニウム型でショボイ核爆発を起こしているくらいならば、まだいいのだ。ウラン濃縮に比べれば。お前頭おかしいのか?と思った人はいいからこの本を読め。議論はそれからだ。

      ウラン濃縮の完全廃棄ではなく、一時停止であるというところがまたポイントで、だからヨーロッパは慎重な姿勢を見せているという世界情勢もよくわかるようになる。日本の政治家の反応はどうなの?きっと、ウラン濃縮の重大さがわかってないんだろう。

原発事故があったとき、水素爆発ではなくて、原爆のような爆発は起きないのか本気で心配した。しかし、この本を読んで安心した。と同時にそれまで何度か名前を聞いたことのあった「もんじゅ」のような高速増殖炉がもしもの際はいかに危険なものなのかを知った。原発に必ずしも反対ではない私も、高速増殖炉には反対する。

この前ニュースの特集で第5福竜丸に関連したものをやっており、まとめでキャスターが「原発も同じようなものですからね」と言っていた。以前なら私もそう思っただろうが、今は、そりゃまったく違うだろと言える。

エネルギー問題のところを読めば、将来的な技術革新のもとでならばともかく、現状では太陽エネルギーで原子力発電の代替をというのがたわごとであることがよくわかる。自然エネルギーでは太陽エネルギーが一番有望だと思うが、それでこの程度なのである。太陽エネルギーにチャレンジするのは選択肢の一つだとは思うが、今はまだコストが高く、その経済的リスクは小さくないと思う。

第3講の原子力に本書の半分以上が費やされている。その原子力の8項目のうちはじめの2つ

  • 放射線の基礎知識
  • 放射性物質の基礎知識

をとりあえず読めば、きっと風評被害の加害者にはならないだろう。そして、むやみに放射能を恐れることもなくなるだろう。放射線の単位にシーベルトではなくてレムを使っているのでそこだけ読みづらいかもしれない。換算表を作ったのでよければ参考にしてもらえればと思う(たいしたものではないが)。

100レム = 1シーベルト
1レム = 0.01シーベルト = 10ミリシーベルト
0.1レム = 1ミリシーベルト
0.0001レム = 1マイクロシーベルト

原発について語りたいのならば、さらに3項目

  • 原子力①
  • 原子力②
  • 核廃棄物

を読む必要があるだろう。

核廃棄物は深刻な問題である。一体日本ではどうなっているのだろう。仮に今後原発の事故がゼロだとしても、核廃棄物は残り続ける。放射能がなくなるよりもきっと人類の絶滅の方が早いだろう。それはただ問題を先送りしているだけで、そういう意味では原発は次の技術が確立するまでの過渡的なつなぎであり、将来的にはなくすべきものであろうと私は思う。

そうそう、核廃棄物は、ロケットに載せて太陽に放り込めばよいじゃないかと漠然と思っていたこともあった。しかし、今の技術ではロケットが落ちるリスクの方が圧倒的に高いということで(確かに衛星の打ち上げなどよく失敗しているし)、その選択肢はありえないということも書いてあった。

つづくは地球温暖化に大半が割かれている。そこでまたエネルギー問題や原子力についてまとめてあるので、そちらも参照。

追記(2012.11.14)

13日の朝刊にシェールオイルの拡大でアメリカの原油生産量が2020年までに世界最大となり20年代半ばまでそれが続くという記事が一面に出ていた。

世界情勢に与えるインパクトという点では大きいと思うが、その事実については、私はふ~んと思っただけだった。それは、この本の「第二講 エネルギー問題 7 石油の終焉?」を読んでいたからだ。

石油がなくなったらどうするんだろう?というのは石油が燃料だけでなく、どれほど工業製品に使われているかを知れば知るほど、思考を拒絶したくなるような大問題だ。この点に関して、私は将来が不安で不安で仕方なかった。この本を読むまでは。

結論を言うと、コストさえ無視すれば、石油は今と同じ使用量ならば1000年持つ。石油の使用量が増えたとしても数百年は持つという。それは、石炭から石油を作る技術がすでにナチス・ドイツの時代からあるから。そして、そのための石炭が(アメリカ、ロシア、中国、インドに)十分豊富にあるから。

結局、石油に関しては、どこが生産するかは別として、経済性と環境の問題ははらむものの、次の技術革新までは大丈夫そうだということになる。

購入・各種データ

画像も文字もアマゾンにリンクを張ってあります。

今この世界を生きているあなたのためのサイエンスⅠ

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初回更新:2012-03-04 (日) 18:07:13
最終更新:2012-11-14 (水) 02:00:11
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