南極越冬隊 タロジロの真実

感想など

今TBSで放送しているドラマ『南極大陸』の原作本。キムタクのドラマはとりあえずチェックしておくというクミゴン(妻)に付き合って私も見始めたのだが、第1話で完全にノックアウトされた。戦後日本の復興にかける意気込みに国民や民間企業を巻き込んでの南極観測実現へのプロセスに何度も目頭が熱くなった。

話を絞るために、残念ながらこの本ではそこまでのことは書かれていない。

この本の著者は、ドラマとの対比でいうと『仮面ライダーカブト』でサソードを演じた山本裕典が扮する一番下っ端の犬塚であり、キムタクが演じる倉持は菊池になるが、ドラマは原作の方の人物像をよりどころにしながら、いろいろミックスしているのがわかる。

ボツンヌーテンに登頂したのは、犬係の二人と実はもう一人はお医者さん(長髪で豪傑)だったのだ!鯨の死体はあったが、遭難はなかった。ちなみに、あとがきに簡単に触れられているが、第4次南極越冬隊では実際に遭難して死者が出ており、その隊員と著者とは小学校から大学院まで同じ道を歩んできた親しい間柄だったという。これなどは堺雅人扮する氷室を想起させる。

ドラマは、今夜の放送を入れてあと2回。来週で最終回だ。原作の内容はほとんど消化され、あと残る山場はタロジロとの再会であり、もしも入れるとしたら後年死体の見つかったリキ(と思われる犬)のエピソードだろう。

タロジロと実際に再会したのは著者だけであり、事実に即するなら犬塚が第3次南極越冬隊に参加することになるが、おそらくドラマでは倉持が行くことになるのであろう。

再会のシーンは、ぜひ映画『南極物語』のようにはしないでいただきたい(もう撮影は終了しているが)。原作にはこうある。

目の前の犬たちは、私が想像していた痩せこけている姿とは似ても似つかなかった。まるまると太り、まるで小熊のようだ。彼らは首を下げ、上目でじっと疑うように私を見上げる。明らかに警戒している。私は、さらに一歩前に出るが、犬たちはその分後ずさりする。私と犬との距離が狭まらない。にらみ合いが続き、今度は犬たちが前に進むと、私はその分下がってしまう。

ここではこれ以上一つ一つドラマとの対比を取り上げないが、それらを比べるだけでも楽しい。もちろん、ドラマをまったく見ていなくても、内容は日常とはかけ離れているので新鮮味にあふれていて、興味深いエピソード満載。飽きることがない。実際に南極で越冬した著者ならではの体験談で、これ以上のものはちょっと考えられない。

たとえば、第5章 ボツンヌーテン犬ゾリ行では

気温は、マイナス12.3度。温度が高いとこうも違うものなのか。(中略)風さえ弱ければ、素手でもぜんぜん冷たくない。日照時間も長くなり、旅行にはまったく快適だ。

マイナス12.3度は温度が高くて作業がはかどるとは!こんな文章、体験した者でないと絶対かけない。

本のタイトルは、おそらく売れるように出版社側が考えたものだろうが、実際私もそれに惹かれたが、必ずしも内容を的確に表してはいない。ただ、実際に南極で犬係だった著者の犬への思いについて書かれたところは、犬好きはもちろん、私のように犬を飼ったことのないものでも、とても共感できる。足手まといになってしまった老犬テツと著者とのやり取りも心にしみる。

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南極越冬隊 タロジロの真実 (小学館文庫)

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初回更新:2011-12-11 (日) 12:52:14
最終更新:2011-12-11 (日) 15:30:43
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