日本語の練習問題

美しい日本語を!

『日本語の練習問題』表紙・クリックで拡大

帯には、人生を変える「美しい日本語」の授業。とある。人生を変えるということについて、私はけっして誇張表現だとは思わない。ただ、この本で練習をしてすぐに人生が変わるとも思わない。相当な訓練は必要だ。そのためのきっかけの一冊とは言えると思う。

高2か高3のとき、アインシュタインの「私は言葉を使って考えない。むしろ使わないほうが考えやすい。考えたことを言葉にするのに一番苦労する」というような言葉を知った。残念ながら、どこで読んだのかどうしても思い出せないのだが、深く感銘を受けた。さっそく真似をしてみようとしたのだが、どうも息苦しくなった。言葉を使わないようにするのに、息をとめていたのだ。どうやら言葉で考えるということは、呼吸と同じレベルで無意識の働きのようだ。

私が言葉の力について意識し始めたのは、20年ちょっと前だと思うが、身を持って思い知ったのは、『オプティミストはなぜ成功するか』を読んでからだった。そして、この3、4年でそれはさらに深まった。それは上長の影響。言葉使いが実に巧み。同じ内容を伝えるにしても、表現を変えると、こうも違うのかというのを何度も何度も実感した。端的にいえば、仕事に生かして、収入が格段に増えた。

言葉使いや表現に関してはまだまだ多くの問題を抱えており、死ぬまで修行だと私は思っているが、最近はあわせて、できれば美しい日本語を学びたいと思うようになってきた。この『日本語の練習問題』はそんな私にぴったりだった。

第1章に敬語を持ってくるところがにくい。わかっているようでわかっていない敬語。思わず反省し、ひれ伏してしまう。

第2章の主語と述語については、まあ、これは英語でだいぶ鍛えられたし、軽いだろうと思ったが、さにあらず。予想したところとちょっとアプローチが違った。ああ、これを受験生のときに知っていればもう少し楽できたのにと。

第3章の接続語は比較的得意なので、問題は概ね楽勝。問題に使われている夏目漱石や中原中也の小説や詩の美しさに打たれた。しかし、こういったものも悲しいかな、解説がないとまだ私のレベルでは味わえないのだなあ。

第4章 感情意思を伝える表現を身につける が、続く第5章の五感を言葉に取り入れて表現する とともに私の中では白眉。ここを読んでいる途中で、書いてあることを参考にして妻にメールをしたら、その返事は、とてもうれしくなるようなものだった。いつもは直接的過ぎて、ひくといっている妻が、だ。

「感情語」だけでは「表面的なありふれた感覚」しか相手に伝わらないということです。

第6章の擬音語や比喩も、タイトルだけ見ると「それはわかってる」という気がしたのだが、私が想像したよりもずっと奥が深かった。P216、

今、感性を磨くトレーニングとして、石川啄木、中原中也、梶井基次郎の三人の作品を取り上げてみました。そして、三人の共通点に気がつき、愕然としています。

私はむしろここを読んで愕然とした。え?気づいてなかったの?それぞれの紹介があったから、読者は気づく仕掛けにはなっているが、著者は選ぶ際には気づいてなかったということだろう。そこに気づくのに少し私は時間がかかったが。

第7章の総合問題、太宰治の初期の短編『魚服記』が使われているが、やはりこうして問題形式で解説してもらわないと、まず私には読み取れないと思った。

おわりに、には著者の熱い思いが詰まっている。著者のブログにも3日間限定で全文(?)載せてあったようだ。宣伝はけしからんという批判もあったようだが、宣伝に何かマイナスのものを感じるヒトは、本気でものを売ったことがないヒトだろう。そういうヒトは『「本気で生きる」以外に人生を楽しくする方法があるなら教えてくれ』の”15 それは「意志のある現状維持」か?それとも「思考停止の現状維持」か?”のP73を読んでも同じことを感じるのだろうか。

今度は『東大現代文で思考力を鍛える』大和書房を読んでみようかなあ。きのう、本屋で平積みになっているのを見た。

購入・各種データ

画像は楽天ブックス、文字はアマゾンにリンクを張ってあります。私はhontoで買いました。

日本語の練習問題

関連サイト


混沌の間>混沌の書棚>日本語の練習問題

初回更新:2013-12-01 (日) 20:15:47
最終更新:2013-12-02 (月) 09:31:20
a:1425 t:1 y:0