流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則

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生物と非生物の統一理論!?コンストラクタル法則とは?

ビジネスブックマラソン(BBM)のメルマガで本書を知ったのだが、最後まで文章を読まずに買うことを決めた。BBMを参考にずいぶん本を買ったが、こんなことは初めてである。(BBM:『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』 エイドリアン・ベジャン、J・ペダー・ゼイン・著 vol.3321‏

序文がもう最高潮の興奮である。いくつか、抜き出してみる。

まず、シビレタところ。

この法則は、生きているということの意味について新たな理解を提示し、それによって、科学のさまざまな分野を隔ててきた壁を取り壊す。生きているとはすなわち、流れ続けること、形を変え続けることなのだ。系は流動と変形をやめれば死ぬ。たとえば河川流域は…(以下略)

生きているとはすなわち、流れ続けること、形を変え続けることなのだ。系は流動と変形をやめれば死ぬ。我が意を得たり!そして、生物の話を持ってくるかと思いきや、まず河川の話を持ってくるとは!

コンストラクタル法則は、自然界で見られるデザインを説明するだけでなく、それよりもはるかに多くのことができる。なぜデザインが現れるかを理解し、将来そのデザインがどう進化するかを予測するのに使える法則を、はっきり示すものだからだ。

地球の大きな生命史の中では、無生物のデザインと、生物のデザインと、科学技術のデザインの出現と進化は、単一の筋書きを語っている。ダーウィンが生き物たちのつながりを示したのに対して、コンストラクタル法則は地球上のあらゆるものを結びつけるのだ。

で、そのコンストラクタル法則とは、一体なんなのだ?これがどうもすっきりしない。まるで熱力学の第2法則のようだ、このスッキリ感のなさ。読んでいて、途中で、で、どう定式化されるのだ?とだんだん私はフラストレーションが高くなってきた。論文や専門書でないので、数式がないのは仕方ないと自分に言い聞かせてはいたが。

コンストラクタルという語感から、フラクタルと関係があるのかと思った。形についての法則だから、関係があるといえば言えるだろう。私がフラクタルというものをはじめて知ったのは、大学1年のときだった。

その数年後だったと思うが、フラクタルがどういう形かという数学的な研究は完全に終わった。どうしたらフラクタルが作られるかという研究が今はメインだというようなことを聞いた。大学4年の研究室を選ぶときの説明会か何かだったように思う。その後、私自身はどのようにしてフラクタル図形が自然界で形作られるか、けっして知ることはなかった。あれから20年くらいたっているのに。

その説明が、まさにコンストラクタル法則であたえられる。さまざまな樹状構造ができるそのわけは、「有限大の流動系が時の流れの中で存続する(生存する)ためには、その系の配置は、中を通過する流れを良くするように進化しなくてはならない」から。

そして、コンストラクタル法則が説明できるのは、樹状構造だけではないという。なにより、進化の方向性も予測する。これがすごい。ダーウィンの進化論は、科学ではないといわれることがある。それは、予測ができないから。これは私の予想だが、ネオダーウィニズムは、今後、このコンストラクタル法則を取り込み、修正を図ることだろう。

ああ、ダメだ、気になるところに触れようとすると、引用だらけになってしまう。P61の「熱力学」の項目も本当はここに書き出しておきたい。自分の備忘録としてだけ、ここにページ数を書いておくことにとどめる。

P94からの「電子機器の冷却システム」のところを読んで、著者がどのようにしてコンストラクタル法則にたどり着いたか、イメージできるようになった。なるほど、それで熱力学と。あわせて、厳密にではなく、ぼんやりとだが、こんなような感じでフラクタル構造も出来上がっていくのかとなんとなくイメージできた。

話が広範囲に広がるので、あれもこれも興味深いのだが、一つだけあげるとすれば、陸上の短距離選手に黒人が多く、水泳選手に白人が多いのはなぜか?ということに対するコンストラクタル法則の適用である。これにはとても感動してしまった!

一般人をそんなに巻き込むとは思えないが、これはドーキンスの『利己的な遺伝子』のように、間違いなく、ただし、それなりに、物議を醸し出す本だと思う。おそらく間違っていることも少なからずあるだろう(あくまで私の直感だ)。それでも「仮説の真価は単に正しいかどうかではきまらない。優れた反論を生む仮説は、優れた仮説である」という広中平祐の言葉を思い出す。

コンストラクタル法則が成り立つには、自由が必要だというような記述がある。総じて、チャウシェスク独裁政権下でのルーマニア出身の著者らしく、自由への渇望が凄まじい。その生い立ちもまた、コンストラクタル法則発見の一助となったかもしれない。

コンストラクタル法則の概念の濫用は危険だとは思うが、あえて2つ触れておきたい。

一つは、最近少しニュースになったリニアモーターカーについて。あんなのいらないという意見がある。私のツイッターのタイムライン上でも否定的な意見を見かける。私も別にいらないだろうと思っていた。しかし、コンストラクタル法則に照らし合わせると、リニアモーターカーの建設は必然かと思う。

もう一つは外来種の問題について。これは、下手に触れるとサイトが炎上する危険性があるので、黙っていようと思ったが、やっぱりちょっと触れておきたい。

生物の多様性は、環境の多様性と深い関係がある。そして、例えば小笠原諸島のように、一度も地続きになったことのない火山島では、流れの自由度が低いので、生物も独特の進化を遂げた。そこにある種の価値があるわけだが、そして私もそこに価値を見出す一人だが、コンストラクタル法則に従えば、やがてそれらは失われることになるだろう。

固有種が汎用種に置き換わっていく。ヒトの流れのせいで。そして、そのヒトもまた自然の一部。どれもこれも、外来種の問題とは、根本的に考えると結局こういうことになるようなあと思っていたことに、コンストラクタル法則は、すべて説明をあたえてくれる。くわしくはここには書かないけどね。

あ、砂漠とサボテンの話について触れるの忘れちゃった。あそこもコペルニクス的転換。いつかここに書き足したい。

購入・各種データ

画像は楽天ブックス、文字はアマゾンにリンクを張ってあります。私はhontoで買いました。

流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則

売れてます!(先月2016.06、ここからアマゾンに飛んだ3人に1人が買ってます)


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初回更新:2013-09-19 (木) 13:27:41
最終更新:2016-07-04 (月) 09:11:01
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