能力開発100の方法

学生時代からいろいろ影響を受けた一冊

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 私が持っているのは1989年6月10日の第1刷だ。文字通り能力開発に当時は特に興味があったから、本棚から手にとってみた。当時湯川秀樹の『天才の世界』なども同じ三笠書房の知的生き方文庫のシリーズにあり、よく立ち読みしたものだ。

 今ちょっと開いて読み返してみると…まず、紙がかなり茶色になっているのに驚く。そして、字が小さい(でも文庫本ってこんなもんか)。そして、勢いのある、読むだけで何だか元気になるリズム感のある文体。内容は多くを忘れているが、思わず読み始めると止まらなくなる。

 この本を読んで、私ははじめて松下幸之助のすごさを知った。他で知る人はもちろんたくさんいるだろう。でも、私はここで知った。そのまま引用するとこんな感じ。

7 「あたりまえのことを、あたりまえに、ただし徹底的にやることだ」

 創造性というと、何か特殊な天才的な人物しか持っていないように思ったりするが、創造性は万人共通と考えるところに新しさがある。これはGEスティーブンソン博士らが史上天才と言われてきた人々の生い立ちと、思考プロセスを徹底的に分析検討した結果到達した、いわゆる「創造工学」によって立証された考え方である。
 つまり天才と言われた人々の生涯を深く研究してみると、意外に普通天才的と考えられている神秘的なものはほとんどなく、むしろ誰でも知っており、誰でもできることを、常人の何倍何十倍の、それこそバカではないかと思われるような努力によって、執拗にやりぬいた結果、おどろくべき発明発見をなしえたことがわかったのである。
 (中略)
 松下幸之助氏が天才的経営の秘訣を「あたりまえのことを、あたりまえに、ただし徹底的にやることだ」と言ったのも同じ意味であった。

 松下幸之助について出ているのは、このページではこの最後の一文だけだが「あたりまえのことを、あたりまえに、ただし徹底的にやることだ」というのは、今でも仕事で使っている。なんというか、この前の文章があるから、とても印象に残った。

 この文章をパソコンに保存したのはもう20年以上前だが、今読み返してみて、エジソンもまさにそうだなあと思っていたら、中略のところはまさにエジソンのことが書いてあった。ちなみに、有名な「天才は99%の汗と1%の霊感からなる」というやつ。汗がパースピレーションで霊感がインスピレーション、なるほど、韻を踏んでいたのか!というのもここで初めて知った、確か。

 この本を読んで初めて知ったということでは、デール・カーネギーの『人を動かす』もそう。いずれ『人を動かす』にはたどり着いていたと思うが、やはり学生時代から愛読できたのは、この本のおかげである。

 仕事をする前から、次の言葉に触れていたのも幸運だった。

23 相手の立場になりきって考える「客観的な眼」を持て!

 とくに大切なのはお客様のクレーム(苦情)である。これは「神の声」である。お客は神様なのだから、クレームはまさに神様のお叱りの声なのである。クレームは給料を貰っていない社外の方が金を出して商品を買って下さり、検査係でも品質管理係でもないのに商品テストをして、その結果をわざわざ手紙や電話で教えて下さるのだから、この声を粗末にしたら罰が当たるというものである。
 クレームはその50%以上が改善、新製品開発に結びつくと言われており、クレームを大切にしない会社は必ずダメになるといってもまちがいない。

 クレームを大切にするということに関して、これ以上説得力を持った文章にいまだお目にかかったことはない。私の読書量が少ないだけかもしれないが。

 そしてこれだ。当時の私にとって、今でもそうだが、とても大きかったのは。

51 「本当に書きたいこと」を書けば人は必ず感動する

 「母の手紙」はどの母が書いたものでも人々の心をうつのは、稚拙で、たどたどしく、誤字あて字だらけであってもわが子を思う愛情が文章からあふれでており、それが読む人を感動させるからである。
 われわれが文章を書く場合にも、人にうまく見せようとか、読んでもらおうという邪念を捨て去って、自分がほんとうに訴えたいことを、悩みも、苦しみも、わからないことも、うれしいことも素直に書いてみるといい。そうすると一見支離滅裂、首尾一貫しないように見えても、全体として何を言わんとし、何を訴えようとするかがよくわかり、読む人に感銘をあたえるものである。

 私の高1のときの担任であり、2年間英文解釈を担当してくれた稲垣瑞雄は作家でもあり、ものすごく厳しい先生だった(『半裸の日々』参照)。作家とは一字一句、ここまでこだわるのかと、毎回授業は緊張と感動の連続だった(最初の頃は緊張だけだったが)。その影響をどっぷり受けたので、高校以来、文章が気軽に書けなくなった。

 それ以前にも文章を書くのは今と違って、学校の課題があるときだけだったが、もうとにかく書けなくなった。それが、この文章を読んで、その硬直した自分の中の何かが一気に氷解した。今でも、うまく書けないなあというときでもこの文章を思い出している。「人にうまく見せようとか、読んでもらおうという邪念を捨て去って、自分がほんとうに訴えたいことを、悩みも、苦しみも、わからないことも、うれしいことも素直に書いてみるといい」逆に、うまく書けないなあというときは、実は、本当に訴えたいことではないんだなと疑うようにしている。

 今回、これを書くきっかけになったのは、サマセット・モーム法だった。

58 書きなれるためのノウハウ---サマセット・モーム法

『月と六ペンス』などで知られるイギリスの作家サマセット・モームは、毎日タイプライターに向かって小説を書く習慣をつけていたが、よい文章がなかなか出てこないと、まず「サマセット・モーム、サマセット・モーム、サマセット・モーム……」と自分の名前をタイプに打ち出したそうである。しばらくそうしていると、頭の回転がだんだん速まってきて、まともな文章が流れ出したそうである。この方法は、いわばウォーミング・アップである。

 『月と六ペンス』は読んだことないし、今後も読む予定はないけど、図書館に行くたび目に入る分厚い文庫本だった。サマセット・モームという名前も何度も見ていたのであわせて覚えていた。そのため、サマセット・モーム法と初めて聞いたとき、興味を持った。

 サマセット・モーム法は、アレンジして、今でも仕事でも使っている。どうにも気分が乗らないときは、頭をまったく使わない単純作業系から手をつける。その仕事もいずれやらなければいけないものであり、一石二鳥であったりする。やっているうちにアイデアが浮かんできて、仕事が乗ってくるということは、しょっちゅうある。ついさっきも、ツイッターにサマセット・モームと書こうとしたくらいだ。それでこの本のことを書こうと思い立ったのだ。

 ちょっと前にやはりこの本のことが気になって調べたのだが、著者は残念ながらもうこの世にはいないそうである。この本には感謝してもしきれないくらい恩恵を受けており、一言お礼をしたかった。

購入・各種データ

 アマゾンにリンクを張ってあります。もう中古じゃないと手に入らなさそうですね。

能力開発100の方法 (知的生きかた文庫)

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初回更新:2013-08-14 (水) 18:50:50
最終更新:2013-08-14 (水) 19:14:45
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