雲の分類

はじめに

瞬間瞬間、連続的に変化している雲を厳密に分類することにはそもそも無理がある。分類とは瞬間を切り取ったぶつ切りに他ならないから。それでも、ヒトは分類して名前をつけずにはいられない。ここではWMO(世界気象機関)による分類を記す。

一覧表(大分類)

生物の分類を真似て、リンネの二名式命名法に習っているというのだが、はっきり言って、この表だけを見てもそれがよくわからない。それについては、またあとのほうで。

イメージしやすいように、類については一番下の積乱雲をのぞいて、一般に見られる高さ順にした。また、種・変種・副変種については、各類の中で見られるとされる頻度順にした。

高さ
(10種雲形)
変種副変種
上層雲5000m~15000m巻雲毛状雲
鈎状雲
濃密雲
塔状雲
房状雲
もつれ雲
放射状雲
肋骨雲
二重雲
乳房雲
5000m~10000m巻積雲層状雲
レンズ状雲
塔状雲
房状雲
波状雲
蜂の巣状雲
尾流雲
乳房雲
5000m~10000m巻層雲毛状雲
霧状雲
二重雲
波状雲
なし
中層雲2000m~7000m高積雲層状雲
レンズ状雲
塔状雲
房状雲
半透明雲
隙間雲
不透明雲
二重雲
波状雲
放射状雲
蜂の巣状雲
尾流雲
乳房雲
2000m~7000m高層雲なし半透明雲
不透明雲
二重雲
波状雲
放射状雲
尾流雲
降水雲
ちぎれ雲
乳房雲
2000m~7000m乱層雲なしなし降水雲
尾流雲
ちぎれ雲
下層雲500m~2000m層積雲層状雲
レンズ状雲
塔状雲
半透明雲
隙間雲
不透明雲
二重雲
波状雲
放射状雲
蜂の巣状雲
乳房雲
尾流雲
降水雲
100m~2000m積雲扁平雲
並雲
雄大雲
断片雲
放射状雲頭巾雲
ベール雲
尾流雲
降水雲
アーチ雲
ちぎれ雲
漏斗雲
地表付近~500m層雲霧状雲
断片雲
不透明雲
半透明雲
波状雲
降水雲
対流雲500m~13000m積乱雲無毛雲
多毛雲
なし降水雲
尾流雲
ちぎれ雲
かなとこ雲
乳房雲
頭巾雲
ベール雲
アーチ雲
漏斗雲
(参考)8848m
3776m
634m
エベレスト
富士山
東京スカイツリー

リンネの二名式命名法は、属と小種名であらわすもので、たとえばヒトならば、ホモ・サピエンスとなる。雲の場合は、属にあたるのが上の類で、小種名に当たるのが、種とか変種になる。しかし、生物の場合は、必ず属と小種名がセットで学名として名づけられるのだが、雲の場合は、種も変種も副変種もすべて当てはまらないというのもある。

また、ひとつ(というかひとかたまり)の雲に対して、種・変種・副変種が複数見られることもあるというのが決定的に異なる(種は2つ以上は同時に見られないが)。まあ、雲だからしょうがないとおおらかな気持ちで接するのがいいのだろう。

類について

10種雲形の名前の覚え方

はじめてこの雲の10種類の名前を見たとき、たじろいだ。似ているし、いまいち命名のルールがわからん。『「雲」の楽しみ方』で一覧表を見たとき、自分なりに編み出したと思ったが、すっかり忘れていた。『雲のカタログ』にそれが出ていて、やっとわかるようになった。

次の3つを組み合わせると完璧だ。

  1. 「乱」がつく⇔雨を降らせる乱層雲と積乱雲
  2. 「巻」か「高」がつく⇔雲ができる高さについて
    1. 「巻」がつく⇔高いところにできる雲
    2. 「高」がつく⇔中くらいの高さにできる雲
    3. 何もつかない⇔低いところにできる雲
      ※雨を降らせる乱層雲と積乱雲は雲が厚く、高さについては低いところから高いところまで幅がある
  3. 「積」か「層」がつく⇔形状について
    1. 「積」がつく⇔かたまりになっている
    2. 「層」がつく⇔広がっている
    3. 何もつかない⇔巻雲

似ていてわかりづらいなあと思っていたが、この日本語のネーミングは、きわめて合理的なものであった。この組み合わせさえ覚えておけば、名前だけで雲がイメージできるようになる(あ、『雲のカタログ』などを何度も見て、雲の形も頭にインプットしておく必要はあるけど)

さあ、もう一度上の表と見比べて、当てはめてみましょう。

巻雲
高いところにできる雲。かたまりでも広がりでもない。※唯一、繊維状の雲
巻積雲
高いところにできるかたまり状の雲。
巻層雲
高いところにできる層状に広がった雲。
高積雲
中くらいの高さにできるかたまり状の雲。
高層雲
中くらいの高さにできる層状に広がった雲。
乱層雲
雨を降らせる層状に広がった雲。※中層から下層や上層にも広がっている
層積雲
低いところにできるかたまりをもって広がった雲。
積雲
低いところにできるたまり状の雲。
層雲
低いところにできる層状に広がった雲。
積乱雲
雨を降らせるかたまり状の雲。※下層から上層まで達する

はい、10個、完璧に覚えられました!

種・変種・副変種について

10種雲形の類はいいとして、この種・変種・副変種が雲の分類をかえってわかりにくくしていると私は思う。そもそも同じ名前が出てきすぎだ。ただでさえ区別のつきづらい巻積雲と高積雲の種なんてまったくいっしょだ。高さも一部かぶっているし、これでは区別がつかないのも当たり前だが。それはさておき、種・変種・副変種は次のように決められている。

雲の見た目の形状による名前
変種
雲片の並び方や厚さなどの特徴による名前
副変種
雲の一部分の特徴や雲に伴って発生した雲につけられる名前

この種と変種の決め方を頭に入れて、もう一度上の表を見ると、ああ、なるほどと思えてくる。

副変種というのが雲ならではの見方だと思う。生物だったらまずこういう分類は出てこないだろう。

種について

すべてで14種ある。異なる類でも同じ種があるのが厄介なのか、むしろ覚えるのに楽なのか。

  • 毛状雲…巻雲、巻層雲
  • 鈎状雲…巻雲
  • 濃密雲…巻雲
  • 塔状雲…巻雲、巻積雲、高積雲、層積雲
  • 房状雲…巻雲、巻積雲、高積雲
  • 層状雲…巻積雲、高積雲、高層雲
  • 霧状雲…巻層雲、層雲
  • レンズ状雲…巻積雲、高積雲、層積雲
  • 断片雲…層雲、積雲
  • 扁平雲…積雲
  • 並雲…積雲
  • 雄大雲…積雲
  • 無毛雲…積乱雲
  • 多毛雲…積乱雲

変種について

ひとつの雲が異なる変種の名前をいくつも持つことがある。

並び方での分類

  • 肋骨雲…巻雲
  • もつれ雲…巻雲
  • 波状雲…巻積雲、巻層雲、高積雲、高層雲、層積雲、層雲
  • 放射状雲…巻雲、高積雲、高層雲、層積雲、積雲
  • 蜂の巣状雲…巻積雲、高積雲、まれに層積雲

雲の厚さ(透明度)での分類

  • 半透明雲…高積雲、高層雲、層積雲、層雲
  • 二重雲…巻雲、巻層雲、高積雲、高層雲、層積雲
  • 隙間雲…高積雲、層積雲、
  • 不透明雲…高積雲、高層雲、層積雲、層雲

副変種について

独立した雲としては認められていないようだ。

部分的に特徴のある雲

  • かなとこ雲…積乱雲
  • 乳房雲…巻雲、巻積雲、高積雲、層積雲、積乱雲
  • 尾流雲…巻積雲、高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、積雲、積乱雲
  • 降水雲…高層雲、乱層雲、層積雲、層雲、積雲、積乱雲
  • アーチ雲…積乱雲、まれに積雲
  • 漏斗雲…積乱雲、まれに積雲

付随して現れる雲

  • 頭巾雲…積雲、積乱雲に付随
  • ベール雲…積雲、積乱雲に付随
  • ちぎれ雲…高層雲、乱層雲、積雲、積乱雲に付随

参考文献


混沌の間>空を見上げて>雲の分類

初回更新:2012-09-22 (土) 22:50:54
最終更新:2012-09-30 (日) 22:23:56
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